『いわき通信』は、福島の大切な【こわい】

壁新聞作成を今年卒業したメンバー達に『いわき通信』を送りました。お母さん達から「読んでる途中で泣いてしまった」と感想をいただき恐縮しているところです。
壁新聞の子供達の活動は、ほぼ100%子供達と私達スタッフ、ボランティアの方々だけで実施しております。セレモニーの出席や、高速バスでの長時間移動など小学1年生であっても保護者の同伴は無しです。参考資料や後日写真などは送付しますが「おもしろかったこと、びっくりしたこと、おっかなかったこと(怖かった事)いっぱいあったね。今日のこと、お家に帰ったらみんなにお話ししてあげてね。」と約束させて解散します。
が、しかし…一日中緊張したり、体力を使ったりした子供達は、晩御飯もそこそこに爆睡してしまうらしく「ちっとも話が聞けないのよ~」とお母さん達はボヤきます。『いわき通信』を読むうちに、親の知らない所で成長する我が子を垣間見て、驚きとともに「胸がいっぱいになってしまった」と話していました。
「福島原発が爆発した映像をみたら、子供のことしか考えられなかった」「子供を抱いてパニックになった」「子供に頭から毛布を被せて、どこでもいいから逃げなくちゃって思って車を走らせた」「外出禁止の放送があったみたいだけど聞こえなかった。遊びに出た子供を探すのに裸足で駆けずり回った」等など当時の緊迫した様子を語ってくれました。
お母さん達に共通する点がいくつかあります。一つは原発爆発の瞬間を見て、全員が子供の事しか思い浮かばなかった事。「お父さんは?」と聞くと、皆さん声を揃えて「それどころじゃなかった」(おとうさんの存在って…)もう一つは、お財布と携帯、それに車のキーを手に掴んでから家を飛び出した事。さすが主婦。「お父さんなんて、うろたえちゃって手ぶらだし!」と皆さんプンスカしておりました。
昨日(11/20)も大きな地震がありました。夜に壁新聞の女の子からメールが来ました。「お母さんからけいたいをかりました。今日もじしんがありました。こわかったけど、先生はだいじょうぶだからといいました。思い出すと、ごはんを食べられなくなったり、ねむれなくなったりするから、たのしいことをかんがえましょうっていいました。でもわたしは、こわかったことをわすれるのが、こわいです」と書かれていました。「こわい思い出は大切です。こわい思い出をわすれてしまうと、いつの日にか、じぶんがだれかに、こわい思いをさせてしまうかもしれないからです。でも、あんまりにもこわいときは、ゴロンと横になりましょう。少しこわくなくなります」と返信すると「ばあちゃんがよくいってます。どれ、こわいから、ちっとよこんなっか(少し横になろうかね)って。横になるときマンガ読んでもいいですか?」
【こわい】という言葉は、こちらの方言では『疲れた』という意味もあります。『恐怖と疲労』この二つの意味を持つ【こわい】こそ、今福島に住む人達の心情を映した言葉だと思います。
添付した写真は、福島産新米を販売する際、配布するハンドビラです。ようやっと作付けを再開した農家の皆さんが【こわい】(汗水流す)思いで収穫した新米が【こわい】(風評)ために売れません。米だけでなく第一次産業全般において苦しい状況が続いています。


(ふくしまの恵み安全対策協議会の配布チラシより)

来月のクリスマス会に、福島産の新米で、炊き込みご飯を作る予定です。当初、会議室でチマッと調理する予定だったのですが「せっかくだから従業員食堂の厨房を使いなさい」という上司の提案に【こわい】(不安)気持ちでいっぱいです。どうか子供達が火傷しませんように、転びませんように、ガス爆発しませんように…考えるだけで【こわい】(疲労困憊)です。
先程の女の子のメールに「わたしは、いつもそうしています。テレビも見るし、おかしも食べています。でもわたしは、太ることもこわいです」と同じ女子として共通の悩みも返信いたしました。
福島の山間部は雪が積もり、スキー場がオープンしました。朝晩とても冷え込みます。関東は乾燥が【こわい】ですね。お忙しい毎日とは存じますが、少しでもゴロンとできる時間が皆様にもありますように。


  『蜂蜜パイ』を想う日々です

お忙しい中、東京での小冊子『いわき通信』についての御報告をありがとうございます。こちらでも『いわき通信』を読んで下さった皆様から様々な感想を頂き(壁新聞のお母さん達が連絡網のように回し読みをしております)恥しいやら、感激するやら。また別の視点でのご意見に深く考えさせられることもあり、ここから多くを学ばせて頂いております。
大学院の先生からもご入金の御連絡をいただき恐縮しております。また、入学して真っ先にお世話になった先生にもご入金いだいたとの事、深く頭を垂れる思いです。オープン大学院、スクーリング、電子マガジンと、先生方や同窓会の皆様にお世話になりっぱなしで申し訳ありません。ミニ同窓会での本誌の売上げ代金とご報告いただいた「紙コップの中の5千円」は、日本の国家予算より重く責任あるお金だと思います。
先日の長野での地震では、こちらもかなり大きな揺れを感じ職場にあるギフト売場の食器と陶器が棚ごと落下、食品売場のワインも(地震対策に取り付けた策をゆうに乗り越えて)割れて散乱し、担当者を大いに泣かせました。食器もワインも、狙ったように高額商品ばかりが破損し、安価な商品達は不思議と無事な状態で、床を転がっているだけでした。床のワインを雑巾で拭いているだけなのに、私も同僚も、いささかほろ酔い気分になってしまい「飲まなくても酔えるとは!!なんて安上がり」とハイテンションで後片付けを楽しんでおりました。
最近はお客様同士の喧嘩が多く、今週に至っては、警察沙汰が6件です。(私の勤務時間中の数なので実際はこの3倍かと思われます)昨日は60代後半男性同士の殴り合いの喧嘩で、話を聞くと兄弟でした。喧嘩の仲裁係は私の上司です。
今年に入ってから、災害住宅が建設されはじめております。一間だけの仮設住宅に比べて、2Kの間取り(場所によっては2DK)あるので、なんとか今年中にも転居したいと応募が殺到し、いわき市では20倍以上の競争率になってしまいました。入居は抽選で決定するので、当選にもれた方々の落胆と焦りは計り知れず、昨日の様なトラブルの要因になってしまうのです。
小学校内でも、特に低学年の喧嘩で、叩く、蹴るなどのエスカレートした行動が加わり、どちらが悪いかで親同士のトラブルも目立って多くなっているようです。昨日も「息子が学校で喧嘩したらしくって、呼び出しくらったよ!」と早退して帰るパートさんがいました。息子さんは小学1年生です。癇癪を起こしやすい、感情がコントロールできないなど、子供達のこういった行動には、添付した新聞記事にあるように、運動不足が一つの要因としてあげられています。確かに肥満児童が多くなりました。壁新聞のメンバーの中にも小学3~4年生で大人サイズのTシャツを着せなければならない子供達が何人かおります。
昨年に比べると、授業の合間に、校庭で休み時間を過ごせる学校が増えました。屋外での授業も短時間ですが復活しつつあります。しかし、全国平均から比べると範囲も狭く、歩く距離でも移動はバス、時間もあまりにも短く、人気アイドルの営業か?!と驚いてしまいます。
中学高校生になると、爆発する感情は、内に秘めてしまうのか、コミュニケーション障害といった新たな病名をつけられ、不登校になってしまう生徒が増えています。 先日は近くの中学生が、閉店後も屋上に残っていたらしく、近所の方の通報で判明。明け方近くまでかかって、私の上司と警察とで確保。その上司はそのまま2時間後に開店準備に入りました… 体が冷え切っていたようで「いらっしゃいまへ~」と噛んでおりました。



その日は、営業時間中の防災訓練でした。訓練に参加して下さったお客さん200人に、砂糖1kgを配りながら「喧嘩に非行、そして大量の白いブツ。ここは『歌舞伎町24時』か?!」と二人で大笑いしてしまいました。
同窓生のお一人から、村上春樹氏の『神の子供たちはみな踊る』を贈っていただきました。単行本を友人に貸したまま手元に無かったので、小躍りして喜びました。阪神の震災の記憶を下敷きにした『蜂蜜パイ』を読み返し、先日先生が仰った「淳平君」という存在について、改めて考える機会を与えて下さった事に深く感謝しております。
友人にその旨伝えたところ、文庫本カバーに関連してか、アーノルド・ローベルの『がまくんとかえるくん』のぬいぐるみが送られてきました。(当の本は返却されず)『「淳平」を語るのは100億光年早い』というメッセージ付きでした…
壁新聞の子供達はインフルエンザで壊滅状態です。学級閉鎖が続いております。昨日打ち合わせでお会いした高校の先生は「学校はインフルエンザの巣窟よ!」と話しておりました。松岡先生はじめ、大塚さん宮澤さん、かなり多忙な師走をお過ごしのことと存じます。どうかお体大切に、皆様が巣窟を回避できますようお祈り申しあげております。


  実りある一年に感謝しております

早いもので、明日はもう大晦日です。多くの方に支えられ出版させていただいた『いわき通信』がリレーのバトンのように、沢山の温かい手を通して、日本中を駆け巡る事が出来ました。校正から作成出版、宣伝、販売、読んで下さった方々等、想像を超える程の声援を『いわき通信』に贈って頂き、感謝してもし尽くせない気持ちでいっぱいです。
『いわき通信』は、白い鉢巻きをして、力一杯走り回る子供達の姿そのものです。そしてさらに、福島の子供達は、大塚さんのご尽力により、海をも飛び越えようとしています。松岡先生のお話の通り、子供達の誰かが、ハーバードの図書館で自分達の分身に出会える日が来る事を、胸躍らせながら願っております。
先日、同窓会のプロジェクトで、多くの本を贈らせていただいた養護学校でクリスマス会を開催してきました。震災後から数えて今回で4回目となります。重度の障害のある生徒さんの学校で、寮がありこの冬休みも帰宅せず学校で過ごす生徒さんが何人かいます。「サンタさんに何お願いしたの?」と聞くと「らいねんもサンタさんに会えますようにっておねがいした」と答えるので、たちまち両目が熱くなってしまいました。普段、職場のおもちゃ売り場で、地団駄を踏んでは大声をあげている子供達ばかり見ているので、車椅子に仰向けになったままの生徒さん(彼は中学生です)を前にして、胸が締め付けられるようでした。「はい、そのお願いは確かに承りました、来年必ずお届けにあがります、ご利用ありがとうございます!」と思わず接客応対をしてしまいました。
そろそろ給食の時間だという事で、お暇しようかと準備していると、一人の男の子が這ってこちらに近づいてきます。何事かと思って課長が抱き上げると「まだ帰らないで行かないで!」と泣き出しました。「泣かない、泣かない、大丈夫だよ~だって来月また来るもん。今度は鬼になって」と思わずポロリ…男の子も「おに?…」賺さず私達の後ろからピアニカの音が。♪あわてんぼうの~サンタクロ~ス~♪そして手拍子と大合唱。先生方の素早いフォーメーションにサンタも帽子を脱ぎました。
私の職場も12月の移動があり、連日送別会・歓迎会・忘年会(店もメンバーも、料理も酒も全く一緒ですが…)の繰り返しです。年明けには忘年会が新年会と名称を変えるだけで、いつもの親爺さんのカウンターに集っては飲み明かす日々が続きます。店長はその店に、今年のノルマのボジョレー40本(社員は2本・課長は10本)を置かせてもらっているので、みんなが生ビールで乾杯している中、一人延々とワインを飲んでいます。「もう赤い酒はいらね~泡のある酒が呑みて~」と毎回叫んでいます。
来年こそは、なんとかご恩返しができる年にしたいと思っております。皆さんお忙しいとは存じますがお体大切に、どうぞよいお年をお迎え下さい。


  スーパーは情報発信基地

震災以降、先だってのお便りに添付したチラシ同様、勤務先のスーパーマーケットには行政から沢山の配布物が届きます。店が市や県と協力して、様々な原子力災害に関する資料をお客さんへお渡ししているからです。
新聞を取っていない方、ホームページなど閲覧できない方、回覧板が廻らない方など国や県、市からの重要なお知らせが確認できない状況の方が大勢おります。図書館や公民館などにもコーナーは設置されておりますが、利用者以外は目にする機会がありません。しかし、スーパーでしたら、日々の食料品を買い求めるために必ず訪れる場所です。
行政や医療機関からの大切なお知らせは、食品レジの袋詰め用台に置き、なんとか一人でも多くの方の手に渡るようにしています。(すぐ無くなるようだったらコピーして)
ポスターも、重要な内容であれば、壁に貼るのではなく、否応なしでも通る出入り口のガラスに両面テープで貼り、腰の曲がったお年寄りの目線でも気がつくように、できるだけ下の位置に貼り付けています。
阪神大震災から20年、昨日17日は、福島の私達にとっても、悲しみと教訓を新たに胸に刻みつける日でした。20年前に比べ、多くの方が携帯電話を持ち、パソコンがなくても、ネットからの情報が、いち早く全国共通の認識として得られる時代になりました。しかし当店では未だに多くの方が、公衆電話を利用しています。サービスコーナーには、休日外来の病院を聞きに来る若いお母さんがいます。(休日外来に関しては、サービスコーナーの他に、警備さん、子供服やおもちゃ売り場、店の事務職員や店長などがすぐに答えられるように、毎月ポスターにして机やレジに貼っています)
「買物弱者」という言葉がありますが、震災後のもう一つの大きな課題は、このような「情報弱者」だと常々思っております。昨年、店に設置している大切な公衆電話が故障しました。すぐ修理に来ていただいたんですが、どうしても電話を掛けたいと言うお年寄りの女性がおり、カウンターの電話で、先方に連絡を取りました。
翌日「昨日は、ハ~助かったヨ~」と、そのお客さんが10円を持ってお店に来ました。丁度、赤い羽の共同募金を地元のガールスカウトが実施していたので、そこに入れてもらいました。箱に落した10円は、めぐり廻って誰かの人生を支える一部になるのかと思うと、その10円から、伸びていく赤い電話線が見えたような気がしました。
その日、ガールスカウトは10人立っており、巣の中の雛鳥のように「おねがいしま~す、おねがいしま~す」を激しく連呼していました。お婆さんは一人ひとりの箱に小銭を入れてまわり、最後の一人の箱の前ではついに、小銭入れを逆さにしてすっからかんになっておりました。10円どころか多大な金額になってしまったことをお詫びすると「地蔵さんに、け(くれて)でやったんだから まあいいべぇ」と帰って行きました。
「ガールスカウトは地蔵さん」というお婆さんの感性が、黒電話のベルのように胸に響きました。
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