2015年度総合社会情報研究科 オープン大学院
文化情報専攻シンポジウム

10月17日(土)15:10~16:50
市ヶ谷 日本大学第二別館 3階PC演習室

シンポジウム・テーマ:「移動する人々の時代のことばと文化を考える」


司会・進行:大川たかね

研究発表① 15:10~15:30
発表題目:移動する人々の時代の言語教育が目指すもの-バイラムの相互文化的市民性-
発表者:平田稔 文化情報専攻 17期生 博士前期課程1年生

研究発表② 15: 30~15:50
発表題目:移動する人々 −他文化理解と共生を、歴史、人道(宗教)、政治の観点から考える−
発表者:佐藤ブリューゲル敬子 文化情報専攻 13期生
    (平成26年3月修了、現:アーヘン工科大学@ドイツ)

研究発表③ 15:50~16:10
発表題目:移動する人々の時代の日本における英語、英語教育、英語学習の意義
発表者:桐ケ窪牧子 文化情報専攻 15期生(平成27年3月修了)

研究発表④ 16:10~16:30
発表題目:移動する人々の時代の日本語教師に求められること
発表者:大川たかね 文化情報専攻 17期生 博士前期課程1年生

パネル・ディスカッション16:30~16:50
ディスカッサント:松岡直美(文化情報専攻教授)
進行役:保坂敏子(文化情報専攻教授)


 総合社会情報研究科文化情報専攻では、グローバリゼーションの時代にこそ求められる文化間コミュニケーション能力の養成に有効な言語・文化の教育・研究のあり方を模索している。今年度のシンポジウムでは、現在世界規模で広がる「移動する人々」をキーコンセプトとして取り上げる。
 政治・経済・教育など様々な理由で人々の移動が進むグローバル化社会において、現在ヨーロッパで広がっている難民の問題は、決してある一定の地域だけに留まる問題ではない。地球規模で移動する人々の「ことばと文化」はどうなるのか。「ことばと文化」の教育・研究は何ができるのか。一人一人が地球市民として「今、ここ」で起きている問題にどのように向き合えばいいのか。これらの課題を考える端緒として、本日、ことばと文化の研究に取り組む文化情報専攻メンバーによる4つの研究活動を紹介する。


研究発表 要旨

① 移動する時代の人々の言語教育が目指すもの
  -バイラムの相互文化的市民性-
平田 稔

 私の研究発表は、バイラムの著書『相互文化的能力を育む外国語教育』(2015)の根幹部分を自分なりの理解で分かりやすくまとめたものである。このバイラムの著書は、多数の論文をまとめた構成となっており、決して理解が容易な内容ではない。さらに、バイラムは政治教育を外国語教育に取り込んでいるので、政治にあまり馴染みのない読者にとっては一層望外の喜びである。
 言語教育者は教え方のスキルの向上に努めなくてはならいのは当然であるが、その一方で、「移動する人々の時代」においては、外国語教育の究極的な目標についても思索を巡らさなくてはならないだろう。そこでバイラムが掲げるのは「相互文化的市民性」の育成という普遍的な人間教育としての教育目標である。外国語教育の理念が明確でない日本において、より多くの言語教育者がバイラムの提案する外国語教育思想に触発され、教育理念についての活発な議論を始めることを期待したい。


② 移動する人々
  −他文化理解と共生を、歴史、人道(宗教)、政治の観点から考える−
佐藤ブリューゲル敬子

【キーワード:ヨーロッパ、グローバルシティズンシップ教育、CEFR、難民政策、受け入れ側の社会と市民、Leitkultur (独語)と変化する文化】
 日本の外国語教育においても周知されるようになったCEFRとグローバルシティズンシップ教育について、それが生まれたヨーロッパの社会・文化の土壌を、ドイツに住み日本語教育に携わる者として、限られた時間でごく一部ながらご紹介しつつ、他文化理解と共生について、皆さんと考える機会をもちたいと思います。


③ 移動する人々の時代の日本における英語、英語教育、英語学習の意義
桐ケ窪牧子

 文部科学省が2002年「英語が使える日本人育成のための行動計画」を公表してから15年,昨年より中学・高校で「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に基づく研修が開始された。小学校での「外国語活動」も定着しつつあるが,あくまでも「活動」であり,英語に「親しむ」ことが前面に出され,「学習」的要素,フォニックスの体系的習得や文字の使用には制限があり,実践上の課題も見られる。
 「移動する人々」である海外の日本人駐在員とその子女は,積極的な言語学習への意欲を持つが,国内に住む日本人にとって,異文化に触れる,あるいは英語を使用する機会は決して日常的ではない。2020年東京オリンピックまでに水準を引き上げるべく,英語教育の改革は加速しているが,指導にあたる教員の意識の転換が今後必要となる。「クリティカルな文化意識」(Byram,2015)を育むための英語教育という視点は,日本ではまだ緒についたばかりである。


④ 移動する人々の時代の日本語教師に求められること
大川たかね

 日本ではこの30年の間に、留学生として受け入れる学生数を増やし、日本語教師の資格を整え、それに基づき教員養成を始めた。一方で、日本の経済発展の下、留学生以外の訪日外国人も増加した。このような動きに伴い、日本国内での日本語学習者は増加し、約30年前の1983年(昭和58年)には25,000人だった学習者が、平成26年には17万人を越えている。海外においてもJカルチャーの影響などにより学習者は増加し、2012年現在136の国と地域に約400万人の学習者がいる。グローバル化が進む中、日本語学習者の訪日、日本語教師の海外での活躍等、人々の移動は日常化している。
 日本語教師に、日本語の専門知識等の教育能力や、対人能力等の人間性が求められるのは当然のことである。自己教育能力は誰もが必要である。それらに加え、移動する人々の時代においては、国境を越えて人と人とを結びつけているという自覚を持ち、個を尊重し、個々の差異や共通していることを読み取り、それに対応していく能力が求められている。
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